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SHIROBAKO。漫画家対アニメ制作者2015年07月11日 16:21

SHIROBAKOの最終回まで観ました。
最後のモブシーン、作画しんどいよ。

16話と23話の『ちゃぶだい返し』
これと、島本和彦『燃えよペン』での『オリジナルアニメ制作接触編・発動編』
漫画家炎尾燃の原作は大幅に改変されて、パッケージは美少女の水着になってしまい、
「炎尾燃は
 アニメの打ち合わせに完敗し
 泣きながら仕事場にもどったという!」
合わせて見ると、漫画原作者から見るアニメ化と、アニメ制作者から見る原作者が全然違う正反対だなー、っと思ってしまう。
双方とも相手の方が偉そーに思えちゃう訳か。(まあフィクションなので話半分以下だろうが)

この違いは双方の間に『出資者』らが介在するので疑心暗鬼が生じる訳か。

SHIROBAKOでは結局のトコロは野亀武蔵先生が巨匠ぶりを発揮して不器用な木下監督と文字通り歩み寄りをし、オマケに坂木しずかの声優デビューの切っ掛けを造るのはハッピーエンドである。
しかも坂木しずかの劇中劇の台詞が、そのまんま坂木しずかの心中を表現していると言う展開。人事決定権の無い宮森がその偶然に泣くのも劇的である。
予定調和と言ってしまえばそれまでだが、ストーリーに紆余曲折を持たせ、野亀先生からのメール文面が酷いと言うミスリードもあり、客の予想を裏切る展開にはなっている。
あのメールはチャラい編集者茶沢信輔(チャラいから茶沢か?)の捏造かもしれないが、そこに野亀先生のメルアドを載せてしまったのがウンの付きである。
野亀先生から直接着たメールの文面はシッカリとしている。
が、ソレ以外の文面はイーカゲン。

野亀先生『リボンの武者』鶴姫しずかさんです。

『リボンの武者』鶴姫しずかさん
TINAMIにもアップしました。

しかし、本田豊が退社してなければ茶沢のサボり陰謀は早々に暴露されていたかもしれない。主役宮森あおい嬢はまだまだ経験不足である。

こういう複雑なストーリー展開を考えて面白く話が造れるのは集団作業であるアニメならではであろう。ほぼ一人で考える漫画では難しい。
監督やシリーズ構成、脚本家らが、キャラを考え、決着から逆算してストーリー展開を巧くはめ込んでいってるのか?まあ、そうせんとハナシが破綻するわな。

SHIROBAKOのストーリー構成は海外ドラマを参考にしたらしく、一つのエピソードを展開中に次のエピソードの伏線を描いていって、切れ目の無い筋書きにしてるとか?

だから、集団作業で理詰めで作品造りを進めるアニメ制作者に対して、漫画原作者は結構立場が弱いのよ。っと『燃えよペン』で描かれている。
パッケージの売りも考えて、オリジナルストーリーを売り込まれたり、お色気シーンも追加されちゃったりしても、原作に足りない物を補完されたりクリーンナップされたりしたら、原作者はお手上げである。
漫画家は締め切りに追われて、人気や感想の同行に左右されて構想通りにストーリーが進められなかったりしてシンドイ事もあるのに、アニメ制作者に偉そうに言える立場に無いかも知れない。

まあ、アニメの制作者も漫画原作者も、お互い立場が弱いんやなあ、っとシミジミ思う事であるよ。

予定調和と言えば、ヤルキの無い平岡大輔がやや改心する切っ掛けは予想通りタローであるが、ココでクサい台詞や劇的なエピソードが盛り込まれるのでは無く飲み屋で愚痴を聞いてダベるだけ、っと言うのが面白い。
アニメ制作者がしょっちゅう酒を飲めるかどうか疑問であるが、こういう鬱憤バラしも大事よ。
宮崎駿はかつて「毎日酒飲んで」ダラしない製作者がいると嘆いていたが、憂さ晴らしは必要よ。

続いて気になったのは、やはり工程管理の事
作画監督の瀬川美里さんらが平岡の手抜き仕事のせいで、原画が溜まってから来るとか、クオリティが低過ぎるとかクレームをつけるが。
作画監督って原画マンが誰で、どのカットを担当するのか、その日程は?
知らんねんなあ!
これは一般企業では有り得ないよ。
「監督」と名のつく人は上流工程を把握しておかないと仕事にならんやろうが!
絵の修正しかしてないとしたら、結局困るのは自分やんか。
前もって原画マンを把握しておけば、下手な原画マンは人事権を行使してクビにするなりできるし。原画マンの仕事が遅れたら自ら催促しなければ、自分の仕事も遅れるでしょ?
まあ、作中の瀬川美里の様な個人事業主にはそこまでする義理は無いのかも知れないが効率は悪いで。アニメーターら絵描きは自らの絵に没頭するだけで、他人の工程管理までは頭が廻れへんかなあ?
しかし、やはり前に書いた通り大日程、中日程、小日程を管理して、各セクションの責任者は管理しないとイカンよ。
製作進行に任せっきりでは、そこがボトルネックになる。絵描きには専門職のみに専念させるなら、ナオの事、詳細な工程管理が必要である。

もう1個気になった事は色恋沙汰がホトンド無い事
瀬川さんが巨乳である描写をサラリと流しているだけ。他は劇中劇くらい。
だからこそ、平岡今井みどりの脚をチラリと観ただけで「女はいいよな」なんて情けない台詞が生きて来るわけである。
これが主要キャラ5人らが意味も無くお色気コスチュームだったら台無しになる。
って、検索したら同じ様な感想が他にも書かれているな。

同じ感想があったといえば、これもあった。
これまでアニメでスケジュール管理を描いている作品は「宇宙戦艦ヤマト(1974年版)」しか無かったのですが、ついに21世紀初頭に2作目の「SHIROBAKO」となりました。
ちゃんと
「納品まであと12日」
とかテロップが表示されるのも、意識しての事でしょう。

SHIROBAKOの業務改革2015年07月01日 20:58

よーやくHDDに溜まってたSHIROBAKO19話まで観ました。

情報量多いなあ(笑)
まあ活劇では無いからエピソードを詰め込まないと間が持たないか。
日常芝居だけで面白く見せようとしたら高畑勲作品の様にコマゴマとした動きを描写する方法もあるが、これはイマドキの絵では難しい。
面白いけどアニメの造り方とか知らない一般人は理解できるのであろうか?公式サイトで用語など書いているが、これがプライムタイムの番組であれば反響はどうなる事やら?
てなわけで全24話のウチ、前半は「えくそだすっ!」は納品が間に合うか否か?でのドタバタ劇に重きを置き、ちょっとだけ原画を描写。
後半は「第三飛行少女隊」で企画の立ち上げからキャラデザ、背景、等々、全体を俯瞰して描こうとしているのか?

「えくそだすっ!」編ではイヤなヤツが出てこないので、ちょっと奇麗事すぎやしないか?とも思ったけど、「第三飛行少女隊」ではイーカゲンな原作編集者スタジオタイタニック平岡大輔ら、ちょいとクセのある連中が出て来た。最初からコイツらが登場してたらキツかったか。後半の登場で良かろう。20話以降はどうなる事やら?

まあ、面白いヤツは高梨太郎か(笑)
SHIROBAKOのタロー
イラストはTINAMIにもアップしました。
こういうイーカゲンなトラブルメーカーはコメディには欠かせない。
吉本新喜劇のすっちー等に該当する。
余計な事言ってるなあ(笑)
ハリネズミは南北アメリカ大陸には自生してないのに
「山はりねずみアンデスチャッキー」
って、どんなハナシなのか?
白人が欧州から南米に持ち込んだハリネズミの話なのか?
1970年代のトンデモアニメの再現か?
って、昔のアニメ制作者はそれほどウカツでは無いよ。
この作品世界ではアンデス山脈に生息するヤマハリネズミと言う生物が存在する、と言う設定か?
また、主題歌の歌詞に

アンデス山脈よいところ
上は危険だツンドラだ

とあるけど、ツンドラは元々はソ連・ロシア北方の永久凍土の事で、後で北アメリカの似た様な永久凍土も「ツンドラ気候」と呼ばれる様になった。
しかし、実は「高山ツンドラ」と言う呼び方は1970年代にはあまり一般化されていない。昔の百科事典(1975年初版で1982年版)を見ると
「高山帯の上部の荒原植生を、高山ツンドラとよぶこともある」
っと記述されている。さほど一般的とは思えない。
なんて、イヤなイチャモンだ。
いやしかし、動物作画の難しさを描くならリアルな設定の方が説得力が出たかもしれない。

主要キャラ5人のウチ、声優志望坂木しずかだけがナカナカ目が出ないのもリアルなのかなあ?
他の製作進行、アニメーター、CG担当、設定担当らは人手不足なので即採用されても声優は志望者が多過ぎるのかな?
主役を製作進行にしたのも、アニメ造り全体を描写できる事での判断であろう。キャプテン翼がミッドフィルダーなのも攻撃・守備両方描けるからだとか。

アニメーターの安原とCGの藤堂がキチンと仕事出来ているが、高校時代に造ったアニメ「神仏混淆 七福神」は結構ウマい。高校生が描く絵ならもっとデッサンが破綻していてもオカシクは無いが、身体をキチンと描けている。
学生時代から才能があったのだ。
とか言って、実はこれはまだ技量が乏しい子供が描いた絵では無く、プロのアニメーターが下手っぽく描いた絵だからだ。絵を崩し切れてない。イマドキの高校自主制作アニメがドレホドのレベルかは知らんのでYouTubeで幾つか観たが、言ったら悪いが既存のアニメの真似っこしてるが画力が追いついてなかったり、運動曲線がなってなく中割りもスカスカで、やはり素人の出来映えである。
「神仏混淆 七福神」はプロがあえて素人っぽく描いた絵であろう。
もっともアニメ造りは時間かかるからなあ。学生時代にフルアニメーション造ったが数分のフォルムを造るのにナンボかかったか。しかもCGの無かった時代や。

また製作進行のシンドサよ
この仕事内容は一般企業で言えば中間管理職っぽい。係長課長の仕事で、新入社員には荷が重いのでは無いか?成果物の回収作業は力仕事なので新入社員でも良かろうが、日程管理は難しいよ。
観た所、進行表はExcelで管理している様だが、専用の工程管理ソフトは導入してないのかな?アニメ用にカスタムして使用している会社はあるのであろうか?

テレビアニメは各話でパラで進行するので管理が難しかろうが、それならナオの事Excelでは不十分であろう。
しかも、各話でも原画、動画と背景は並行だろうし、原動画もシーン毎に並行して進む筈。
生産業の日程管理では「大日程」「中日程」「小日程」などと区分けする事が多い。それぞれの内容は業種や企業でバラバラだろうが、アニメの場合は

大日程:OP,ED、第1話から最終回までの日程。
    SHIROBAKOのサイトに載っている進行表に近い。

中日程:各話毎の日程。
    各担当会社、担当者もリストアップし管理する。

小日程:スタッフ個々人の日程。
    絵コンテ作業、LO、原画、背景、動画、などなど個人毎の日程。

と言う具合に把握するべきでは無いか?何クール続くか分からないアニメの場合は、1クール毎に造るかな?
SHIROBAKOを観た限りではアニメーターや背景スタッフ、グロスで丸投げした会社などの小日程を作成してないし把握もしてないみたいだが?
コレは企業としてはアカンで。破綻するのは当たり前やんけ。
また、突発的に足りないスタッフを探す時も、属人的なコネに頼っている。だからスタジオタイタニックみたいなインダラな会社を掴まされてしまう。(インダラとは「無秩序」の意味。東京多摩地方の方言である事は知らなかった。東京で仕事してた時は皆「インダラ」とか言ってた。)
他の製作会社ではキッチリと工程管理してるのかなあ?

今やアニオタ連中も立派な社会人になっており、管理職もいる。
作画テクニックや演出などには素人でも、日程管理はプロの連中が観てる。
やはり業務改善が必要では無いか?
IT化が進んでいるが、原動画や背景は手描きも多い。しかし、これらも結局はデジタルにするので、進捗管理も成果物のデータ化とリンクして可能の筈である。フリーのアニメーターらが自宅で描いている場合も多いが、納品の時に工程表が更新するように出来る筈だ。
一般企業の立派な管理職に業務改善提案をしてもらった方が良いかも知れない。

とは言え、立派に工程管理出来てる業界のハナシなら、面白くも何ともないだろうが。

政府はクールジャパンと称して税金使って海外に売り込みばかりしているが、肝心のクリエイターの待遇改善や業務改善の助成はしていない模様。
異業種から効率の良い業務改革の助言や、システム開発などが必要かも知れない。
丸川社長
「腹を空かしているのは観てられない」
とか言う理由で料理を造っているのは、結構深刻だろう。
もっとも政治が絡むのは胡散臭いからイヤ。

ちなみに、ゴスロリ様小笠原綸子さんは、絵を描く時は右利きなのに、野球は左投げ左打ち。
コレは絵を描く右腕を酷使しないための配慮と考えられます。
コレぞプロ意識。

つづく