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ガルパン劇場版を観たwithネタバレ2015年12月06日 21:47

ネタバレと言うかガルパン劇場版観てないと意味不明の内容です。
この映画の評価は、「面白い」では無く「スゴい」のである。
知らない人やアニメに慣れてない人が観たら
「なんじゃこりゃ?」
となるはず。
まあコレは世間でよく言われている事ではあるが。
しかしストーリーは追う事ができるし理解はできる
だがしかし、理解はできても
「なんじゃこりゃ?」
となるはず。
「このアニメに何の意味があるのか?何が言いたいのか?」
そんなクッサイ問いは野暮なハナシである。
娯楽作品なのである。

しかし大規模戦車戦から死傷者がでる心配を排除したらスッキリとした娯楽作品になる事が証明されたわけである。
普通なら戦場漫画シリーズの様に何の救いも無い話になるわけであり、そこをクリアし、純粋にメカニズム描写を楽しめる娯楽作品になったのである。

今回の新キャラ西絹代嬢のイラストを描いてみました。
全身はサイトTINAMIにアップしてます。

ガルパン:西絹代嬢
まあ、それはテレビ版でも同じであったが、それをグレードアップしたいがための映画である(憶測)。
ネットの感想では
「テレビの繰り返しじゃねーか」
なんて野暮なイチャモンもあるが、それがどーした文句があるか?と言うワケである。

展開なんか予告映像みただけで前半の察しはついた。聖グロとの対戦とお風呂シーンがあったので、これは冒頭の練習試合かなんかだろうと思ってたらホントにそうだった。
その後に強敵と戦うのであろうと予想していたが、対戦チームは予想出来なかったが、まあその通りであった。
「また廃校の危機かよ!ワンパターンなんだよ!」
とか言うこれまたバカなイチャモンを書いている奴もいるが、世間知らずと呼んでおこう。
苦労して優勝して廃校の危機を回避したと思ったら、無能政府の都合で約束を反古にされた無念や怒りが分からんのか。キャラの立場にしたら最悪の状況だわ。
折しも日本は先進国中で最も教育に国費を投じてないとか言う話が暴露されており、無為無策でコストカットしかできない文科省。決めた事を「面倒くさイ」と言う理由で一切変更しない融通の無さを見事に描写する結果となっている。

今回の名シーンとしてかつてのライバル校の面々が助っ人に馳せ参じるが、これはスポーツマンシップの奇麗事だけでは無く、このまま文科省の身勝手を許すと次は自分の学校が統廃合の被害に合うかもしれないとの危機感が働いていると解釈できる。
もっとも文科省の件はクドクドと描写する必要も無いので、役人も無名無個性の眼鏡七三役人だけに罪をかぶせている。まるでサイバーフォーミュラスミスの立場である(ちょっと違う)。あの役人を池上遼一デザインの大物悪役にしたらハナシがワヤになる。

しかしまあ、助っ人参上は物語の定石として真っ当であり、例えば三波春夫の十八番「俵星玄蕃」が思い出される。忠臣蔵赤穂浪士に助太刀する架空の人物であるが、槍の名手で、蕎麦屋に変装した浪士の一人杉野十平次を知らずに道場で教えていた。討ち入り当日に杉野十平次
「先生!」
「おうっ、そば屋かあ~」
なんて名調子がある。
大洗と言う御家取り潰しの危機と言う事で忠臣蔵に似た様な状況になっておるので、「わんわん忠臣蔵」を彷彿とさせるローラーコースター上の戦いが行われたのかもしれない(多分違う)。

さて、大洗と対戦した黒森峰、プラウダ、アンツィオ、サンダース、聖グロが助っ人に参戦するのは分かるが、継続知波単は?

ガルパン;トーナメント表
継続知波単黒森峰と対戦したので、本命を破った大洗はスゲー、っと思って参戦したと考えられる。

トーナメントで対戦した相手が仲間となる展開は「リングにかけろ」「黄金の日本Jr.」で成功したパターン。
それぞれの得意技で相手を撃つのは痛快活劇の常套手段である。
とは言えパターン外しでプラウダには泣いてもらった。相手大学選抜の序盤の猛攻により撤退戦を余儀なくされ、弁慶の立ち往生を遂げるわけである。ここで通り雨が降るのも悲劇の演出である。
そして転調で遊園地廃墟でのアクロバティックな戦闘に切り替わる。
遊園地を舞台にしたのは、子供の客を意識したのかもしれないし、プリキュアなどのパロディかもしれない。

「キャラやドラマが弱い」
なんて批判があるみたいだが、このドラマって何?これで何か深刻な話でも造ってキャラを不幸な境遇にして陰々滅々なハナシでも造れってか?
アホらし!
そんなアニメ腐る程あるやんけ。
ドラマっぽい筋書きを造っても娯楽性を損なえば台無しじゃ。
むしろ謎解きとか悲劇とか「地球の危機」とかエロ描写さえ無しでも、娯楽作品が造れると言う事のほうが意義が大きい。

地面を走って大砲を撃つしか芸の無い戦車で、ここまで工夫が出来るのである!と言う実験アニメである事に気付かんかな?
シュールな意味不明なアニメだけが実験作と違うぞ。娯楽もあるわい。

また、言うまでも無く軍オタにとってはマニア向きのネタが満載なので、そっち方面で楽しめるわけである。
私には分からなかったが、予告編で流れていたヴェートーベンの運命であるが、これは映画「史上最大の作戦」で使っており、そのノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)での暗号にヴェルレーヌの詩「秋の歌」が使われる。コレを今回ダージリンが使う訳であるが、イマドキの若い連中には分からんよ。
ミフネ作戦「1941」のパロディであるが、パンジャンドラムにしてしまう所が面白い。コレが理解出来なかったらただ単に遊園地の小道具を使ったアクションにしか思えなくなるわけである。
他にも相当の事情通にしか分からないネタまで結構な数が盛り込まれているとか。
まあ知らん人でも、「ワケ分からん道具が出て来るなあ」くらいでも面白いアニメになっている。
見た目の面白さを追求するために、あえて古い兵器マイナーな兵器を登場させていると思われる。

フツーの人はフィンランド軍のBT-42突撃砲なんか観た事無いし。履帯無しでも走行できる、それどころか履帯無しの方が速いと言うのは知られてないよ。

と言う訳で、ガルパン劇場版は軍オタでは無い一般人から観ても、珍しい戦車が走り回るゲームを1回楽しみ、その後理不尽な国の無策によって主人公が泣きを見て、しかし姉や母親、友人らに助けられて真剣勝負に挑む。そこに更に珍しい戦車が無茶苦茶に走り回る、と言う事を楽しむ映画として成功しているわけである。
相手の大学選抜チームは大戦末期の米英戦車で見た目が随分と近代的である。無個性ともいえるが、そこが敵味方の対比として見せ所になっておる。

知波単は日本軍のパロディであり、突撃しか能の無いトコロが
「軍国主義アニメだー!」
と抗議されない秘策。
ちゃんと福田(司馬遼太郎の本名から)さんが作戦に疑問を持ち、異議を唱えている所が面白い。

戦争のナショナリズム・イデオロギーなんかと、メカニズムをキッパリ分けている所が大人のケジメである。

これがアメリカ映画だと大学選抜チームや文科省の役人は殺されるんやろうなあ。

また実写で保存されている実物戦車を使うと壊れるのを恐れて無茶なハナシは出来ないし、CGにするとどーしても実写俳優と違和感が生じる。CG担当者が戦車に疎いと更に台無しになる。

手描きアニメとマッチさせたホドホドの3DCGが良い塩梅になっている。

戦車があんなに飛び回るのか?と言うツッコミは物理法則、ガリレオ・ガリレイの落体の法則を知らないツッコミ。同じ速度で飛び出せば、軽自動車も重戦車も同じ距離飛ぶよ。戦車も速度違反した原チャリ並みに速いよ。

まとまり無い感想文。

しかし、誉めるだけでは終わらない。続く。