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「風立ちぬ」は前衛映画。「ねたばれぬ」2013年08月01日 20:43

宮崎駿監督の「風立ちぬ」を観た。劇場はほぼ満員。で夏休みにも関わらず子供はチラホラで中高年が多かった。特に高齢者が目立ったのは意外だった。テレビの宣伝の影響が大きいと思われる。
上映後、若い娘から
「棒読みやったなあ、くすくす」
との声。
確かに主役の庵野秀明は棒読みであったが、事前に知ってたので期待もしておらず大して気にならなかった。元々アニメの声優には期待してない。問題は映像だ。
でも、だ。どうやら宮崎駿はワザとヘタな庵野を起用したのだ!
この映画、もしキャリアのあるプロ声優に堀越二郎を演じさせたら、声に感情がこもり過ぎてしまい、演技過剰でシラケてしまう恐れがある!
ヘタな庵野で良かったのだ!
観れば分かるが、内容は坦々とした平板な展開に、所々にインパクトのある飛行機のシーンが「夢」と混ざって入り込む構成になっている。ココにプロ声優が演技過剰な声を当てたら、ソレこそ映画がブチ壊しになった可能性があるのだ。

また、飛行機のシーンはホトンド、堀越の「夢」やイメージとゴチャマゼになったファンタジーになっている。
生々しさを回避したのだ。
物語冒頭の方に関東大震災のシーンもあり、工夫のなされた巧いインパクトのある映像になっているが、コレもあえてリアルな描写は抑えている。
田舎はキレイに描かれているが、
「みどりの多い日本の風土を最大限美しく描きたい。」
との覚え書きではあるが、日本の手付かずの緑はもっと濃い緑だ。黒に近い。それなのに新緑に近い明るい色彩にしている。
リアリティを避けているのだ。
また、言うまでも無く、話題の口三味線による効果音もリアリティを避けるわざだ。もっとも結構こってるけど。

それで、演技の出来ない庵野秀明を主役に据えたのだ。リアリティを避けているのだ。

キャラクターは主役の堀越二郎を含む主要キャラ全員がイヤなヤツでは無く、真面目に仕事をする大正人間と外国人なのだ。本庄や黒川、服部と言った人物は、顔立ちからしてイヤなヤツかと思っていたが、堀越に協力を惜しまない好人物として描かれている。実際にはそんな事も無かろうとは思うが、コレもリアリティを避けているのだ。
勿論、ヒロインの菜穂子は絵に描いた様な薄幸の娘なのに、健気に堀越の嫁になる。おいおい出来過ぎやろう、っとも思うが、コレもリアリティを避けているのだ。

まあ、要するに完全にファンタジー。戦争描写はチョイとだけなのよ。あえて嘘にしている。

もっとも、声優さんはアンマリどうでもよいよな。アニメ雑誌やWEBサイトに声優さんの名前や写真をデカデカとあっても読みとばす。特に声優さんの写真なんてねえ。
アニメの情報は「絵」だけで良い。スタッフインタビューとかもアニメーターや背景スタッフにしてほしい。まあ鈴木Pもテレビの宣伝に顔を出す必要はあるだろうが。アニメの宣伝のためには弁の立つ人が必要と思われるので、鈴木Pがテレビ出演するのも仕方が無いか。
しかし、声優さんは外国で吹き替えしたら、アッチの人に替わってしまうんやし。

で、外国では日本のアニメが内容まで改竄されてしまう事もあるそーで、当初のナウシカも散々なスカ作品に成り下がったらしいし。
と言うワケで、アニメは基本的に台詞無しでも内容が分かってしまう様な
「無声映画」
にするべきである。
単純な内容しかできないのではあるが、どうせ今までの作品でもそうそう難しい内容もあるまい(笑)。
が、「風立ちぬ」は無声映画にするのは難しい。何せ設計者の話なので活劇も無いし。
それでもナントカ台詞に頼らない様に、イメージシーンを多用しておるのでは無いかとも思う。

まあ、わざわざリアリティを避けた前衛映画である訳だ。
戦争描写は前作「ハウルの動く城」で描いている。が、これは精神的に幼いアニメファンには理解し難いようである。

例えば、自衛隊などの話題になった時
「自衛隊の人々が、人殺し好きだと思っているのかー!」
などと幼稚でバカみたいな事を絶叫したヤツも居たし。「ああ、コイツは昔そう思ってたんだなあ。」っと。バカで単純な奴だが、こんな奴は少なくないのかも知れない。
で、まあ国内外に要らぬ誤解を与えない様に、リアリティを排除したファンタジーにしたワケだ。
おそらく昔のNHK「プロジェクトX」みたいな演出にも出来たとも思うが、「今更古臭いな」と言う判断もあったかも知れない。

そいでもって。
庵野の棒読みであるが、大昔の白黒日本映画を観ると、棒読み俳優が多いのよ。
音声技術もマズい事もあるし滑舌も悪く、台詞はナニか聞き取れない事もある。桂文枝が三枝時代に使ったギャグ
「およよ」
も大河内傳次郎の台詞は滑舌が悪く「おのおのがた」の台詞が「およよ」としか聞こえない、と言うのが起源なワケだ。
宮崎駿は昔の白黒日本映画を造りたかったのでは無いか?
飛行シーンと震災シーン以外はカメラは固定させ、ローアングルを多用している。
これは小津安二郎では無いか!
まあ、カット割りは多いのでテンポは速く飽きさせないが、恐らくは小津安二郎を意識した映画では無いか?
「もののけ姫」で黒澤明っぽくして、今度は小津安二郎。
たぶん、そのアタリを狙ったな。


怒りの宮崎駿監督

ちがうか?
「風立ちぬ」の話は、つづく。

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